数学公式を導いた!

次の式をみてください。


 (1)


被積分関数の分子は一次の第一種ベッセル関数です。式(1)は、少なくとも岩波全書の数学公式集には見つかりませんでした。証明はどうすればいいか、私にはわかりません。でもこの公式は、成り立つはずなのです。というのも、式(1)の両辺はまったく同じ光を表現したものだからです。

x軸方向に無限に長い一次元線状スリットをコヒーレント照明したときの像面振幅分布を考えましょう。式(1)左辺の被積分関数



は円形開口レンズの点像振幅分布を表していて、式(1)はそれをスリットに沿って積分しています。つまり式(1)の左辺は一次元スリットを三次元形状のレンズを通して二次元スクリーンに結像したときの像振幅分布のy軸に沿った断面を表しています (図1)。



しかし一次元線状スリットのコヒーレント結像では、レンズを三次元円形開口で考える必要がありません。瞳上の光が図のη軸上にしか来ないので、矩形開口でも円形開口でも結果は同じなのです (図2)。



矩形開口の点像振幅分布は



と変数分離できます。点像の場合は瞳いっぱいに光が来ますが、一次元スリット像の場合瞳上のη軸上にしか光が来ません(横線のフーリエ変換は縦線です)から、y軸方向には開口数ゼロの結像、つまり定数になってしまいます。よって定数cを用いて



となり式(1)の右辺が得られます。計算機による数値積分の結果から比例定数を2に決めると式(1)は成立するようです。というわけで数学力がなくても「同じ物理量を二通りのモデルで導けば数学公式が得られる」ことがわかりました。厳密な数学的証明は数学屋さんに任せて、ほかにも見つからないか探してみましょう。